指針値クリアでも発症
(毎日新聞朝刊)平成23年1月17日(月):記事抜粋

消えないシックハウス:/上 指針値クリアでも発症

 新改築時に建材から出る化学物質(VOC=揮発性有機化合物)で体調を崩す「シックハウス症候群」。90年代後半から社会問題となり、対策が進んだが、住宅や学校などで今も発生している。原因物質が複雑化し、形を変えた最近のシックハウスの実態を追った。【田村佳子】

 ◇規制外物質で複雑化 対策とれず重症にも

 東京・永田町に昨年7月開館した衆参両院の議員会館。12階建てビル3棟に1787億円が投じられたが、議員や秘書が相次いで体調の異常を訴えた。

 民主党の福田衣里子衆院議員は入居から数週間、会館に来ると首がかゆくなり、外に出ると落ち着いたという。同僚議員から「顔が赤い」とも言われた。「部屋が臭かったから窓開けはしていたが、最初はシックハウスとは気づかなかった」と振り返る。

 桜井充・同党参院議員は「ツンとする臭い」でめまいや頭痛を起こし、約1カ月半、会館にほとんど入れなかった。秘書の小林太一さんは「友人の秘書も頭がクラクラすると訴えていた。目が真っ赤になったり、涙が止まらないと話す人も。『何とかしてくれ』と大勢の人に言われた」。

 医師でもある桜井氏は8月の参院予算委で問題を取り上げた。会館建築を所管する前原誠司・国土交通相(当時)は「供用開始前に5物質の室内濃度の測定を行い、いずれも厚生労働省が定めた指針値以下であることが確認されている」と答弁するのにとどまった。換気が強化されたことで、会館内の異臭は次第に治まった。

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 化学物質の規制は建築基準法の03年改正で、白アリ駆除剤「クロルピリホス」が全面禁止、「ホルムアルデヒド」が使用面積を制限された。住宅品質確保法に基づく「住宅性能表示制度」では、ホルムアルデヒド、トルエンなど計5物質を「特定測定物質」とし、厚労省の指針値と照らして任意の検査対象としている。公共建築物でチェックされるのもこの5物質が一般的で、議員会館も同様だった。

 東大大学院の柳沢幸雄教授(室内環境学)は昨年8月、参院議員会館内の計3室で、空気中のVOC濃度を測定した。確かに5物質は指針値を大幅に下回ったが、朝方のVOCの総計(TVOC)が1立方メートル当たり902〜2452マイクログラムだったことに着目。「シックハウスを起こすのに十分」と判断した。

 TVOCは規制外の化学物質を含み、大気の汚れを示す。厚労省は「暫定目標値」として、400マイクログラムと設定しているが、成分分析やリスク評価が難しいため、実際の建築では、ほとんど測定されていない。

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 住民や利用者が症状を訴えても、原因がよく分からない−−こんなケースが最近、増えている。京都市の病院でシックハウス外来を担当する内山巌雄・京大名誉教授は「以前のような激烈な症状はないが、新築物件で不調になる人はまだまだ多い。原因不明で対策をとれないまま症状が進み、化学物質過敏症になる人も増えているのでは」。

 国民生活センターによると、シックハウスに関する相談は、03年度の607件をピークに減少傾向にあるものの、09年度も280件と今なお多い。「シックハウス対策をした健康住宅を建てたが、住み始めたら症状が出た」(30代女性)、「シックハウス対策の材料を使った工事を依頼したはずが、対策になっていなかった」(男性)などの苦情があったという。

 柳沢教授は「住民が体調不良を訴えても、施工側は『5物質はクリアしている』と反論する。シックハウスは以前は『気のせい』と否定される病気だったが、今は『この建物では起こりません』と言われる病気になってしまった」と懸念する。


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